ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P1-353
*東敬義(三重県立図書館),阿藤正樹(三重県津農林水産商工環境事務所)
全国で約21万箇所のため池が農業用水源として使用されており、それらは洪水調節機能や地域住民の親水空間、野生動植物の生息場所などの多面的機能を有すると考えられている。しかし、近年、農業従事者の減少や高齢化により、ため池の維持管理が困難になり、多面的機能の維持が危ぶまれている。そこで、農林水産省は、利水者や自治体が最小限の堤体改修を行ない、複数のため池を水路で連結して相互に利用し、多面的機能の発揮を支援する「ため池群広域防災機能増進モデル事業」を策定した。この事業では、防災や渇水対策に加えて、生態系保全構想及び親水空間の創造等の計画を立てることとなっている。このうち、三重県では、伊勢平野に位置する津市片田田中地区において、「ため池群広域防災機能増進モデル事業」(2004-2008年度)が採択され、「多面的機能」発揮計画において、対象地域の生物調査と学校教育「総合的な学習の時間」を利用した啓発活動を行なうことになった。そこで、2004-2005年度に、本事業地域に生息する動植物の種類や分布、地質等を調査し、この結果を基礎として、2006年度から3年間、地元小学校と協力して総合的な学習の時間「自然調べ」を開催した。授業では、「植物」、「昆虫類」、「魚類・両生類・は虫類」、「鳥類」、「地質」の学習班に別れ、野外で観察を行なった。その結果、児童はため池とその周辺に、多数の種類の動植物が生息していることを知り、地域の自然の大切さを認識したようである。本事業終了後は、学校が主体となって、自然観察授業を継続しており、今年度で2年目となった。ここでは、事業最終年度に児童・保護者・教員を対象としてアンケ-ト調査した結果と、その2年後の調査結果から、行政が主導して成立させた自然観察授業の効果や問題点、課題等を考察した。