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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-001

ヒサカキの性特異的な防御とそれに相関する花食者の産卵選好性

辻かおる*,曽田貞滋 京大・院・理


雌雄異株植物では様々な形質で雌雄差が見られることが知られており、食植者から被る食害の程度が雌雄で異なる現象も観察されている。にもかかわらず、食害の程度が雌雄で異なる要因はほとんど分かっていない。本研究では、雌雄異株植物であるヒサカキ(Eurya japonica)花蕾の防御における性的二型が、花蕾食性鱗翅目であるソトシロオビナミシャク(Chloroclystis excisa)(以下ナミシャク)に多大な影響を与えていることを示した。ナミシャク幼虫は花蕾を摂食する際、萼を摂食しなければならないが、雌の花萼には雄の花萼より多くの化学防御物質が含まれ、雌の花萼を摂取した幼虫は全て死亡した。つまり、野外で雌の蕾を食べた幼虫は死亡することになる。また、ナミシャクの成虫は雌花より雄花に多く産卵することも明らかになった。この結果は植物の防御形質の性的二型が植食性昆虫の幼虫期の適応度に影響を及ぼすことをはじめて明らかにしたものである。

このナミシャクはヒサカキが生息できない寒冷な地域にも生息していることが分かっている。そこで、今回明らかになった適応的な産卵行動がヒサカキに対する適応なのかを検証するため、ヒサカキと共存する地域のナミシャクと、非共存地域のナミシャクの産卵選好性を比較した。その結果、共存地域のナミシャクの方がより雄花に産卵する傾向が強いことが明らかとなった。この結果は植物の防御形質の性的二型が植食性昆虫の幼虫の生存を大きく左右し、その結果として成虫の産卵行動を変化させる選択圧として働く可能性を示唆するものと考えられる。


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