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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-007

エゾアザミテントウの副次的食草利用能力:野外での利用状況との関係

*村井 歩, 藤山直之(北教大・旭川), 片倉晴雄(北大・院理)


エゾアザミテントウは食植性のテントウムシで、成虫と幼虫は共にキク科のチシマアザミ(以下、アザミ)を主な食草とする。本種は札幌市近郊ではメギ科のルイヨウボタン(以下、ルイヨウ)を併用しているが、北海道北部ではルイヨウはアザミの食い尽くしや枯死に伴って成虫が副次的に利用するのみであるとされる。さらに、札幌市近郊ではウリ科のミヤマニガウリ(以下、ニガウリ)が副次的に利用されることが知られているが、北海道北部での利用状況は不明である。本研究では、北海道北部の3地点(音威子府村上音威子府、幌加内町政和、名寄市智恵文智東)のエゾアザミテントウ集団を対象とした飼育実験と野外調査を通じて、ルイヨウとニガウリという副次的食草の利用能力と野外での利用頻度との関係について検討した。

実験条件下では、いずれの集団の成虫もルイヨウとニガウリをアザミと同程度もしくはそれ以上に好んで摂食した。また、上音威子府集団と智東集団の幼虫はルイヨウとニガウリ上でアザミ上と同程度もしくはそれ以上に良好に成育したが、政和集団の幼虫のニガウリ上での成育は蛹化までは良好であったものの、羽化率はアザミとルイヨウ上での値と比較して有意に低かった。

2年間の野外調査では、秋口にかけて成虫(恐らく新成虫)によるルイヨウとニガウリの利用が上音威子府と智東で観察された一方で、政和では確認されなかった。また、3地点全てに共通して、ルイヨウとニガウリへの産卵およびこれらの食草上で幼虫が成育している証拠は見つからなかった。

以上の結果より、野外での副次的食草の利用頻度には成虫の選好性以外の何らかの生態学的要因が関与していることが考えられた。さらに、成虫による副次的食草の利用を通じ、それらの食草上での幼虫の潜在的な成育能力の向上が生じている可能性についても議論したい。


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