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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-009

ブナ幼樹の誘導防御の経時変化

*青山千穂,小池孝良(北大院農)


従来、害虫の大発生は鳥などの天敵が重要な役割を果たすと考えられてきたが、多くの植物は自身の身を守るための「防御」機構が存在し、ボトムアップの重要性が注目を集めてきている。植物の防御は多様で、葉を硬くするような物理的防御と毒物を備える化学的防御などが存在する。しかし広葉樹の場合、防御と成長には生化学的なトレ-ドオフの関係が成り立つと考えられている。そこで常備的な「恒常的防御」と、更なる食害を回避するために食害に遭ってから防御物質の生産を始める「誘導防御」が存在する。本研究では、食害後のシュ-トの応答を手がかりに樹木が持つ抵抗性の経時変化を追跡することで、誘導防御の基礎的な知見を収集した。特に、防御と環境の関連に着目し、CNB(炭素・栄養均衡)仮説の検証を行った。このため、特に窒素が誘導防御に与える影響を解明した。対象は約7-9年生の全天条件のブナである。5月上旬、植食者を避けるため、各個体につき3枝に透過率82%の寒冷紗で作成した袋をかけた。また、防御を誘導するためマイマイガの3齢幼虫を袋に入れ、シュ-ト内の葉身の約20%を食べさせた(食害処理)。試験地を2つに分け、2008年から3年間に渡り30 kgN ha-1yr-1の窒素を付加した区と無施肥の対照区を設けた(窒素処理)。処理ごとにそれぞれ4個体、計16個体を用意し、それらの個から時間を追って葉をサンプリングし、1回のサンプリングで1個体あたり3枚の葉を採取した。結果は総フェノ-ル量、縮合タンニン量では、2009年は食害処理で防御物質量が有意に増加しており、2010年では食害処理で有意に増加した後、50日後には誘導防御の低下が確認できた。また、2010年の処理開始前のサンプルでは2009年の食害処理の影響が見られなかった。以上から、ブナは被食率約20%では、食害を年を経て「記憶」するのではなく、食害を受けると防御を誘導させていることが分かった。


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