ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-014
*角田智詞,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命科学)
土壌資源が豊富な場所に、選択的に根を配置する植物は、資源をめぐる競争に有利だと言われている。しかし、集中分布した根は、地下部植食者に摂食されやすい可能性がある。本研究では、仮説「栄養塩が不均質に分布する土壌では、栄養塩への応答性が高い植物が、地下部植食者の影響を受けやすい」を栽培実験により検討した。
地下部植食者(有、無)と土壌栄養塩の空間分布様式(均質、不均質)を2要因とし、2種の植物の個体重を評価した。ホソムギとヘラオオバコを1個体ずつ、6cmの間隔を空けて5号鉢に植栽し、乱塊法に則りガラス温室内に配置した。土壌栄養塩の空間分布が均質な条件では、緩効性無機栄養塩を土壌全体に4g混ぜ込んだ。不均質な条件では、縦方向に十文字に四つ割りした土壌の1/4に3g、残りの3/4に1g混ぜた。植物を移植後28日目に、地下部植食者としてマメコガネ幼虫を鉢に一匹加えた後、さらに28日間栽培した。その後、刈取り、乾重量を秤量した。
地下部植食者がいないとき、均質な栄養塩分布ではヘラオオバコで、不均質な分布ではホソムギで、個体重が有意に大きかった。また、不均質な分布下のホソムギでは、地下部へ物質分配が有意に多く、栄養塩の多い土壌への応答性がより高いことが示唆された。地下部植食者がいるとき、均質な栄養塩分布では、両種とも個体重が有意に減少した。一方、不均質な分布では、個体重は、ホソムギでは有意に減少し、ヘラオオバコでは有意に増加した。
両種とも地下部植食者に摂食されうるが、不均質な栄養塩分布では、栄養塩分布への応答性の高いホソムギが、もっぱら地下部植食者に摂食されたと考えられる。地下部植食者がいると、選択的な根の配置が、むしろ不利となる可能性がある。