ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-015
*小野寺洋史,小黒芳生,酒井聡樹(東北大・院・生命科学)
花食害とは、種子形成前に繁殖器官(花弁・葯・子房など)が食害者によって食べられる現象のことである。花食害が起こると、繁殖組織の破壊による配偶子数の減少、花弁の見た目の変化による花粉媒介者の訪花の減少などが生じる。このように花食害は、繁殖成功に大きな負の影響をもたらしうる。しかしながら、葉への食害に比べ、花食害に関する情報は非常に少ないことが現状である。
そこで本研究では、食害者が、繁殖器官のどの部分を好んで食べているのか、好んで食べる要素は何かを把握するために、栄養成分含有量(N・P・C)を繁殖器官ごとに調べた。そして、栄養成分含有量と食害率の関係を調査するために、各繁殖器官における食害率を測定した。
2010年5月中旬-6月中旬に、仙台市の青葉山にプロットを2つ作り、プロット内のヒメシャガをつぼみ形成期から花終了期まで追跡した。そして、ほぼ同じ成長段階のつぼみを採集し、繁殖器官ごとの栄養成分量を測定した。また、花ごとに食害の有無を調べ、食害を受けた花はどの部分に食害があるかを調べ、繁殖器官ごとの食害率を検出した。
その結果、葯は、N・P・Cとも子房・花弁に比べて有意に多く含んでいた。子房は、N・Pは花弁に比べて有意に多く含んでいたが、Cは有意差がなかった。花弁・葯の食害率は、子房に比べて有意に高かった。
子房に比べて栄養成分量が多い葯のほうが、食害率が高いことが分かった。栄養成分の少ない花弁の食害率も高いことから、繁殖器官における食害率は、単に栄養成分量だけでは決定されない事が示唆された。今後は、防御物質を測定し、植物と食害者の関係の理解をさらに深める必要がある。