ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-017
*押山友美(岐阜大応生),安藤正規(岐阜大応生)
岐阜県山中峠ミズバショウ群生地(以下山中峠湿原)は、岐阜県の天然記念物に指定されている。山中峠湿原では2006年と2009年に野生動物によってミズバショウの葉や根が食い荒らされたという報告があるが、この被害に対する詳細な調査はおこなわれていない。本研究では、加害動物の特定と、動物による湿原の利用状況の把握のため、湿原内の7カ所に自動撮影装置を設置した。さらに、ラインセンサスによるミズバショウの被害調査をおこなった。
2010年7月8日-12月7日にかけておこなった自動撮影装置による調査の結果、ニホンジカ(以下シカ)がミズバショウの地上部を採食し、さらに、シカとニホンイノシシ(以下イノシシ)がミズバショウを掘り返していることが明らかとなった。当月8日-翌月7日までを当月と定義し、動物が撮影された写真の枚数を集計した。その結果、7月の撮影枚数が最も多く(217枚/月)、その後撮影枚数は減った(3-29枚/月)。動物が撮影された写真のうち、シカの87%(190枚/218枚)、イノシシの68%(32枚/47枚)は日の入り後-日の出前に撮影された。2010年7月7日と9月24日に湿原内の5カ所に幅1mのラインを設け、ライン上のミズバショウ被度と被害の程度を調査した。7月にはライン内にミズバショウが確認されたが、9月には確認できなかった。また、動物による被害として踏みつけ、掘り返し、食害の3タイプが確認された。ミズバショウのあった場所では3タイプ全ての被害が確認され、ミズバショウ以外の植物にも踏みつけと掘り返しの被害がみられた。
本研究の結果から、山中峠湿原のミズバショウは、主に夏期においてシカとイノシシによる食害、掘り返し及び踏みつけの被害を受けており、またミズバショウ以外の植物にも踏みつけと掘り返しの被害が生じていることが明らかになった。