ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-020
*渡邉謙二,持田幸良(横国大・院・環境情報),鈴木茂也(大山林道観察グル-プ)
日本では、人工林の管理放棄と荒廃が全国規模で生じており、保全上の観点から、こうした変化に伴う森林性鳥類の個体数変動を予測する必要がある。この予測にあたっては、葉群密度を考慮することは重要であると考え、鳥類個体数の経年デ-タから今後の長期的・季節的な傾向を捉えた上で、葉群密度の指標となる林相の変化との時系列的な対応を見ることにした。
鳥類個体数は、ライン/ポイントセンサス調査661回の月次デ-タから求めた。また、解析対象種は個体数傾向が読み取れるヒヨドリ、ウグイス、メジロ、アオジとした(紙面上、ウグイスのみ紹介)。林相調査は、調査地域を一辺25mに区切ったグリッドごとに[高木夏緑樹林/高木常緑樹林/低木樹林/裸地・河川]を設定し、各年の林相を求めた(算出法は省略)。長期傾向は、観察個体数の結果を基に12ヶ月季節ロ-カルトレンドモデルをあてがい、季節成分を除いた長期的な傾向x[t]を求めることにした。また季節傾向は、当年の最多個体数と最少個体数の差を求め、この年変動を見た。最後にこれらの結果と、林相の記録からそれぞれの今後を予測することにした。
ウグイスは長期傾向、また季節傾向から見ても、解析した12年を通して右肩上がりの直線を描いており、約15個体増加していた。これは厳冬期の最少観察個体数が横ばいであるにも関わらず、繁殖期の最大観察個体数が増えていることに起因していた。これには繁殖環境となる低木層の発達が示唆され、低木林の林相数が倍増していることからも支持されるが、観察林相別で見るとこの増加を主に担っているのは低木林でなく、高木・夏緑樹林であった。この林相は近年減少しているが、内部の階層発達が個体数増加に寄与していることも示唆された。ウグイスに関しては、今後もスギ植林の倒壊と低木層の発達が続く限り、冬期の横ばい傾向と夏期の増加傾向は続くと考えられる。