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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-023

杠葉尾における農地周辺のシカの摂食の影響

*石丸薫(滋賀県大・環境), 野間直彦(滋賀県大)


滋賀県の湖東地域ではシカによる農作物被害が増加しており、防護策の設置により農作物の被害対策が行われてきた。しかし被害は増加しており、効果的な被害対策が必要である。そこで本研究では、植生管理から被害を抑制するために、山地と農地の植生におけるシカの摂食量を調査し、植生の管理方法を考察した。

滋賀県東近江市杠葉尾(ゆずりお)町の農地周辺において、林床、耕作放棄地、あぜ道、およびササ群落の4つの植生区に4 m四方の調査区を2つずつ設置した。その一方は、ワイヤ-メッシュ柵で覆いシカの食害を防止し(処理区)、もう一方は自由に食害させた(対照区)。各調査区で植生調査を行った後、地上部を刈り取って現存量を求めた。被害を受ける大豆畑を中心に農地周辺とあぜ道に調査ル-トを設け、調査ル-ト上に落ちていたシカ糞の糞数を記録した。そして大豆畑から半径50 m以内、50‐100 m、100‐200 mの3つの距離範囲で、糞数を大豆があり柵がある、大豆があり柵がない、大豆がなく柵がある3つの期間にまとめた。

各調査区の優占種は林床でクラマゴケとチヂミザサ、耕作放棄地でメヒシバとアキメヒシバ、あぜ道でチカラシバとトダシバ、ササ群落でネザサとススキだった。耕作放棄地以外はワイヤ-メッシュ柵の有無による現存量の違いは見られなかった。耕作放棄地ではアキメヒシバの現存量はワイヤ-メッシュ柵のない場合8月に96.2 g/m2、9月に123.6 g/m2減少した。糞調査では、半径50 mで大豆があって柵がない期間にはそれ以外の期間に比べて糞数が約1.9倍多かった。150 m以上の範囲における大豆がなく柵がない期間は大豆があり柵がない期間に比べて糞数が約3.5倍多かった。

以上の結果から、シカが耕作放棄地を主なえさ場として利用すること、およびシカが大豆畑に誘引されることが示された。


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