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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-024

異なる食草におけるルイヨウマダラテントウの発育パフォ-マンスの比較

*富樫朱美(北大・院理), 松本和馬(森林総研), 片倉晴雄(北大・院理)


食植性昆虫の多くは特定の植物に依存しており、食草の変更は食植性昆虫の分化を促す重要な役割を持つ。しかし、新規植物を利用するには代謝・感覚器などの生理的なレベルでの適応に加えて、昆虫とその植物のフェノロジ-が合致することが必要である。ルイヨウマダラテントウは年一化、成虫越冬であり、全生活史をほぼ同一の植物上で送るが、関東地方西部では、展葉時期が短く盛夏には枯死するナス科ハシリドコロを利用する集団と、木本であり晩秋まで利用できるエゴノキ科オオバアサガラ(以下、アサガラと略)を主に利用する集団の存在が知られている。そこで、本研究では、これらの食草へのルイヨウマダラテントウのフェノロジ-の同調性について検討した。野外調査では、各々の集団がそれぞれの食草のフェノロジ-に同調した発生消長を示し、ハシリドコロ依存集団は食草の枯死する6月末にはほぼ姿を消したが、アサガラ依存集団は9月中旬になっても、一部の新成虫が活動を続けていた。一方、ハシリドコロで飼育した場合には、枯死前の葉を与えられた6月中旬以降の個体の成育は遅延し、小型であったが、アサガラで飼育した場合にはこのような時期による成育の違いは認められなかった。また、いずれのテントウ集団もハシリドコロ(枯れ死前の葉を除く)ではアサガラよりも早く成長し,蛹重も重かった。しかし、2種食草間の発育の違いは、アサガラ依存集団の方が小さかった。ハシリドコロ飼育の場合には2集団間で違いが見られないが、アサガラ飼育ではアサガラ依存集団の方が早く成長し、より大型になった。以上の結果は2種食草上のルイヨウマダラテントウの発育パフォ-マンスが、利用している食草の違いによってもたらされた可塑的な要素と、それぞれの食草への適応を反映した要素を含むことを示唆している。


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