ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-025
*山崎 良啓(京大院・農), 直江 将司(京大・生態研), 藤津 亜季子(農工大院), 兼子 伸吾(京大院・農), 山崎 理正(京大院・農), 正木 隆(森林総研), 井鷺 裕司(京大院・農)
東北アジアに広く分布する液果樹木ミズキ(Swida controversa)は、果実食鳥により種子が散布される。果実は夏から秋に結実するが、結実期や量には大きな個体差と年変動がある。また、渡り鳥を含む多種の果実食鳥が種子散布に貢献しており、果実食鳥の種組成は季節により変化する。そこで本研究では、このような果実量と果実食鳥の時空間的な変化に伴うミズキの種子散布パタ-ンの変化を明らかにすることを目的とした。
調査は、小川学術参考林(茨城県)で2009年(豊作)と2010年(凶作)に行った。結実木に訪れる鳥の観察(194時間)と双眼鏡による結実量のカウントを結実期間を通して2週間おきに行った。また、結実木下に種子トラップを設置し、それらで回収した鳥散布種子の母樹由来組織の遺伝子型をSSRマ-カ-により決定し、結実木の遺伝子型と比較することで、鳥散布種子の母樹を特定した。
2009年は16種の鳥が訪れ1時間あたり0.75個の種子が、2010年は11種の鳥が訪れ1時間あたり0.35個の種子が散布された。豊作年の方が凶作年に比べ、多様な鳥により多くの種子が持ち去られているといえる。主な種子散布者はメジロ・大型キツツキ・ヒヨドリ・クロツグミなどであったが、種により訪問時期・訪問頻度・訪問あたりの採食数は大きく異なった。
遺伝解析により、鳥に採食されても母樹下に散布される種子が多い一方で、100 m以上散布される種子(3%)やプロット外からの移入種子(27%)も存在することが分かった。また、結実ピ-ク時には、母樹下に散布される鳥散布種子が減り、プロット外からの移入種子が増加する傾向にあり、種子散布量が増えるだけでなく種子散布距離も長くなることが示唆された。