ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-026
*藤津亜季子(東京農工大・院)
低木に結実する液果の主な種子散布者と考えられる鳥類の種子散布特性は、高木の場合と比べて異なる可能性が考えられる。しかし、日本をはじめとする冷温帯において、低木の液果の種子散布者として機能する鳥類相やそれらの鳥類の種子散布特性は、高木の場合に比べて不明な点が多い。
そこで本研究は、茨城県北茨城市の小川群落保護林の林内とその周辺部で、鳥類による低木樹種の液果における種子散布特性を特に量的な要素に注目して明らかにすることを目的とした。対象とした樹種は、ニワトコ、ツリバナ、ヤブデマリ、ムラサキシキブ、カマツカ、ガマズミである。量的な種子散布効率の要素である「鳥の訪問頻度」と「1回当たりの採食果実数」を測定するため、鳥種ごとに訪問個体数、採食個体数、採食果実数、滞在時間を測定した。全樹種でのべ242時間の定点観察を行った。その結果、鳥による果実の採食行動が観察されたのはニワトコのみで、採食者はヒヨドリとキジバトであった。このような訪問頻度は、既存研究と比べて非常に低かった。その原因として、調査を行った2010年はツリバナ、ヤブデマリ、ムラサキシキブ、ガマズミ、オトコヨウゾメなど秋に結実する樹種が不作であったことが考えられる。
一方で、不作ではなかったニワトコやカマツカへの鳥類の訪問頻度が低かった理由として、(1)鳥類による低木の液果の採食量は結実期のほかの食物資源量と関係する、(2)今回の対象樹木の生育環境は森林内部が多かったが、鳥からの果実の見つけやすさや採食のしやすさを考えると生育環境によって鳥類の訪問頻度が異なる、(3)低木の液果の主な種子散布者は鳥類ではない、などの可能性が考えられる。