ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-028
*田中 悠希(鳥取大学大学院・農),佐野 淳之(鳥取大学・農・FSC)
種子散布者としての鳥類の役割は古くから指摘されており、散布体としての植物と散布動因としての鳥類について多方面から研究されている。森林性鳥類では、鳥類群集の多様度が群葉高多様度と高い相関を持つことが明らかとなっており、その関係は多くの地域で報告されている。また、鳥類が好む階層が鳥類種ごとに異なることや、同じ鳥類種においても季節によって階層の選好性が異なるといわれている。したがって、鳥類と森林の階層構造には密接な関係があると考えられる。そこで本研究では、森林の階層構造が鳥類による種子散布に与える影響を明らかにすることを目的とする。
調査は、平坦な丘陵性の砂丘地に位置する鳥取大学教育研究林「湖山の森」で行った。調査対象面積を約1.8 haとし、この範囲内にシ-ドトラップを15 mごとに54個設置した。回収された種子を2010年5月から自然落下種子と鳥類による被食散布種子に分け、それぞれの樹種名と個体数を記録した。また、シ-ドトラップの内容物を回収する時期にあわせて鳥類の観察を行った。さらに、森林の階層構造を把握するため、各シ-ドトラップを中心に5 m×5 mの調査区を定め、各階層の葉層密度と結実木の有無を調べた。
本調査地では、ヒヨドリ、ムクドリ、ツグミなど17種の鳥類種が確認され、季節によって鳥類種が異なっていた。種子散布が集中した時期はサクラ類などによる春-夏とハゼノキなどによる秋-冬の2回で、散布された樹種数や個体数は秋-冬に多かった。
各階層の葉層密度と各樹種の散布種子数には明確な相関関係はみられなかった。種子の散布を確認した場所は、季節を通して違いはみられなかったが、高頻度で種子が散布される場所については季節や樹種ごとに異なる傾向があった。また、鳥類による種子散布にとって結実木の分布や、秋-冬では低木層の密度が重要であることが示唆された。