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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-032

木曽駒ヶ岳高山風衝地におけるオ-プントップチャンバ-内の植生変化

*尾関雅章, 浜田崇(長野環境保全研), 飯島慈裕(海洋研究開発機構), 水野一晴(京都大院・アジア・アフリカ), 中新田育子(宮城大)


IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次評価報告書は,温暖化にともなう長期的な展望の1つとして「極地や高山の地域社会,生態系など特異で危機にさらされているシステムへのリスクの増加」を示している.日本の本州中部山岳の高山帯は,周北極要素の植物種の南限に相当し,極域と同様に気候の変化にきわめて脆弱な生態系の一つと考えられる.

本研究では,本州中部の木曽山脈・木曽駒ヶ岳山頂付近(標高約2,850m)の高山風衝地において,高山地域の気候変化に対する高山植生の応答を明らかにすることを目的として,簡易温室オ-プントップチャンバ-(OTC)を用いた環境操作実験を1995年から実施している.実験開始から15年が経過した,このOTC内の環境変化に対する高山植物の応答として,植生変化について検討した.

調査区は,5基のOTC内と対照区(CTRL区×6区),およびOTC内の風の影響を検討するため,卓越風向にたいして風下側のハイマツ林縁部(UW区×3区)とした.調査区の面積はいずれも0.25m2で,植生調査は,ポイントフレ-ム法(100ポイント)により,植物の成長が完了した生育期後期にあたる8月23・24日と9月3日に行った.

調査地のOTC内では,植物の生育期間の温度上昇,風の遮蔽のほか,冬季の雪溜まりの効果による複合的な環境緩和効果が発生した.植生変化では,ガンコウラン,ウラシマツツジといった矮生低木の被度および,矮生低木の伸長により群落高がCTRL区の2倍程度に増加した.OTCによる環境緩和にともなう、こうした群落構造の変化は、高山植物間の資源獲得競争の激化をもたらし、矮生性木の寡占化を促したと考えられる。


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