ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-035
金子洋平(新潟大・超域研究機構)
ナラ枯れは1980年代後半から猛威を振るい日本中に被害が拡大し続けている。ナラ枯れはカシノナガキクイムシとそれに運搬されるナラ菌によって引き起こされるが、樹木特性(樹種、直径)が強く影響していることが報告されている。また、地理的要因(斜面方位、標高など)の影響も指摘されているが、樹木特性と地理的要因を併せて解析した研究はほとんどなく不明な点が多い。そこで、本研究はナラ枯れに影響する要因の解明を試みた。
佐渡島は森林の大部分がコナラ・ミズナラの二次林で構成されており、また被害が全島に拡大しているため、多様な地理的要因を含めた解析が可能である。10m×50mのベルトトランセクトを30地点に設置し、標高、斜面方位、傾斜角度、高木(DBH?5cm;枯死木を含む)の樹種と直径を記録し、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて解析した。さらに、ナラ枯れ後の更新を予測するために、各ベルトトランセクト内に5m×50mのサブトランセクトを設置し稚樹と低木(DBH<5cm、H?50cm)の個体数を、1m×2mの実生枠を5個設置し実生(H<50cm)の個体数を調べた。
AICを用いてモデル選択を行なった結果、樹種、樹種とDBHの交互作用、傾斜角度、標高がナラ枯れに影響することが明らかになった。以下に各要因の傾向を示す。?ミズナラとコナラの平均枯死率は78%と33%であり、ミズナラのほうが枯れやすい。?ミズナラは大きい個体ほど枯死率が高かったが、逆にコナラは小さい個体ほど枯死率が高かった。?傾斜角度が大きいところほど枯れやすく、?標高の高い場所ほど枯れにくい傾向があった。ナラ枯れ後の林冠木候補としてはナラ類やサクラ類など16種類の稚樹・実生が確認されたが、全体的に数が少ないことに加え、常緑低木が多いところほど個体数が少ない傾向があった。そのため、ナラ枯れ被害林を再生させるには、常緑低木の密度管理が重要であると考えられた。