ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-049
*酒井武,杉田久志(森林総研),日浦勉(北大苫小牧研究林)
地形と植生の関係については多くの研究がなされてきたが、暖温帯上部に成立する温帯性針葉樹と常緑広葉樹の混交する林分においての事例は少なく、地形に関わるどのような要因が影響しているかについて充分な論議がなされていない。私たちは、四国西南部のヒノキ、ツガ等針葉樹とカシ等常緑広葉樹の混交する成熟した天然生林において構成種の分布と地形の関係を明らかにしその要因を考察した。尾根から谷を含んで設定されたほぼ方形の0.95haの調査区を設置し、田村(1974)に準じて微地形区分を行った。また構成樹種のDBH5cm以上の幹数の百分率を指数とし各10mメッシュの植生をTWINSPANで分類した。結果、1:ヒノキ・ツガ優占群落、2:針葉樹とウラジロガシ・サカキなど多種の広葉樹が混交する群落、3:ホソバタブの割合の高い群落に分かれた。NMDSによる序列化を行った結果、上記の3つの群落が第1軸に沿ってその順序で配置された。そこで、その第1軸の値を被説明変数とし、微地形区分、方位、傾斜と土壌水分条件を表すTWI(地形性湿潤指数)を説明変数として、樹形モデルで要因分析を行ったところ、植生分布に影響する要因としてTWIと微地形区分が採用された。分割された立地カテゴリ-は頂部斜面(A)、TWIで3つに分けられた上部谷壁斜面(B,C,D)、上部麓部斜面と下部谷壁斜面(E)、下部麓部斜面(F)に対応し、A,Bに群落1、C,Dに群落2、E,Fに群落3が分布していた。これらの系列は尾根から谷にかけての微地形配列、土壌水分条件に対応しており、尾根で少なく斜面下部で多い表土の移動量とも対応していた。以上のことから、ここでの種の分布は地形のもたらす水分条件の違いと地表の不安定性に規定されていると考えられた。