ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-055
神田房行(北海道教育大・釧路)
春採湖は釧路市内にある海跡湖で、現在でも海水の流入がある湖である。湖水の表面から2m位下から湖底まで海水が入り込んでいる。かつては硫化水素濃度が世界一を記録した湖でもある。近年この湖ではウチダザリガニが大増殖し生態系に大きな影響を与えていることで問題となっている。筆者はこの湖で水草の調査を1986年に行い、さらに2003年から2010年までの8年間継続して調査を行ってきた。これまでの調査結果をまとめて報告する。
この湖で見られた沈水、浮葉の水草はリュウノヒゲモ、エゾノミズタデ、マツモ、ヒシ、イトクズモ、ヒロハノエビモの6種である。1986年には6種全部が見られたが、2003年にはイトクズモとヒロハノエビモが見られなくなった。その後毎年調査しているがこの2種は見られていない。恐らく春採湖から絶滅したものと思われる。2003年から2010年までの調査では2006年にマツモとヒシが見られなくなったが、ヒシは2007年、2009年、2010年に再び見られるようになった。マツモは2006年と2007年に見られなくなったが、2008年から2010年まで継続して見られるようになり、かなり回復したものと思われる。リュウノヒゲモとエゾノミズタデはこの間常に出現している。
上記の水草の分布面積の変動であるが、1986年の調査では水草全体で湖の約14万平方メ-トルに分布していたが、再調査を開始した2003年には約6万平方メ-トルに減少した。その後毎年分布面積は減少し、2007年には約3800平方メ-トルにまで減少した。2008年からは再び増加し始め、2010年には約22000平方メ-トルまで回復した。
この変動の原因は恐らくウチダザリガニによるものと思われる。ウチダザリガニの正確な生息数は出ていないが、水草の再調査を始めた頃からウチダザリガニが出現してきており、近年の駆除作業により水草が回復してきたのではないかと思われる。