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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-059

冷温帯林におけるニホンザル野生群の冬期森林利用に関する空間的評価

*坂牧はるか(岩手大・院), 江成広斗(宇都宮大・里山科学セ), 青井俊樹(岩手大・農)


ニホンザルにとって針葉樹人工林は、餌資源が乏しく低質な植生タイプであるため、本種の利用頻度は低いと一般的に考えられてきた。しかし、ニホンザルの森林利用に関する研究は、暖温帯林における事例、あるいは農作物依存群を対象とした事例が多く、冷温帯林に生息する野生群を対象とした事例は極めて乏しい。そのため冷温帯林に生息するニホンザル野生群に、この結論をそのまま応用できるとは限らない。そこで本研究では、冷温帯林において、積雪により生息環境が悪化する冬期を対象に、本種の森林利用について評価した。10分間隔で直接観察を行い、観察されたニホンザルの行動を採食、休息、移動の3つに分類した上で、各行動個体の観察地点を記録した。そして地形(標高や斜面傾斜等)や植生(各森林の林齢を含む)、土地条件(林道からの距離)等を環境変数(計12個)として、観察地点(すなわちpresence data)のみで解析が出来るENFA(ecological-niche factor analysis)を用いて、本種の森林利用を行動別に空間的に評価した。その結果、本種の採食適地は、低標高域で林道に近い南斜面の若齢針葉樹人工林に偏っていた。若齢な針葉樹人工林は、林床への日射量が多く、陽樹などの先駆的な植物が多く生育することから、ニホンザルの採食適地として機能している可能性がある。さらに各行動の適地の広さは、移動>休息>採食となり、この3つの行動適地に共通して見られた環境は、低標高域で林道に近い、南斜面の若齢針葉樹人工林であった。これらの環境は、気温や日当たりに関連する要素を含むことから、気温の低い冷温帯林の冬期は、餌資源以外にも寒さを凌ぐための要素が重要であることが示唆された。


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