ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-070
*植月智子(酪農学園大学大学院),吉田剛司,伊吾田宏正(酪農学園大・環境),井田宏之(社団法人エゾシカ協会),宇野裕之(道総研・環境科学研究センタ-)
エゾシカ(Cervus nippon yesoenensis)の個体数の増加により人間活動との軋轢が社会問題化している.一方でエゾシカは北海道の貴重な自然資源でもあることから,持続的な利用が必須である.道内におけるエゾシカ解体処理施設の地理的分布は偏りがあり,効果的に流通させる状況に至っていない.そこで本研究では,GISの空間解析技能を用いて,道内の捕獲状況と処理施設の立地状況から解体処理施設の適正配置に関する考察を行った.
食味官能検査の結果からエゾシカ肉は捕獲後1時間以内に解体したものが好ましいとされていることから,現存する76ヶ所のエゾシカ解体処理施設から1時間以内に運搬を可能とするエゾシカ潜在生息地を求めた.さらにその地域の2007年狩猟者1人1日あたりの平均エゾシカ捕獲数(CPUE)を5キロメッシュデ-タで表示し,運搬不可能な地域における解体処理施設の必要性について検討した.
解体処理施設は76ヶ所中51ヶ所が道東に集中して設置されており,道東のほぼ全域で1時間以内での運搬が可能である.一方で渡島支庁・檜山支庁で捕獲された場合には,1時間以内に運搬可能な処理施設がない.景観的にみても近年積雪が減少傾向であり,エゾシカの生息に良好な環境になりつつあり,処理施設の設置が必要であると考えられる.また道北は海岸から里山にかけて放牧地でのエゾシカの個体数の増加も懸念されている.特に1時間以内の運搬が不可能な枝幸町はCPUEの値も高いことから解体処理施設の設置が必要であると考えられる.本発表ではさらに景観生態学的な手法により解体処理施設の適正配置を検討する上で必要な土地利用や道路密度等の条件も含めて考察する.