ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-076
*御池俊輔,(信大院・農),大窪久美子,大石善隆(信大・農)
水田や水路等の水田生態系は水生植物にとって重要な生育地であり,これらの保全策を検討するためには,分布や立地環境条件との関係を明らかにすることが必要である。本研究では上記の目的から,水生植物群落の分布が確認されている長野県上伊那地域において,2009年および2010年の夏季と秋季に計12ヶ所の水路網において群落および立地環境等の調査を実施した。2009年は3ヶ所で止水域,流水域両方を対象とし,2010年は11ヶ所において流水域を対象とし水生植物の分布と各種立地環境要因を記録した。
2009年夏季における水田の調査区画では,同じ出現種群がまとまって分布していた。これは管理方法が似ていることが一つの要因と考えられたが,隣接した水田間には畔上の溝を通じた水の移動があり,植物の繁殖体が止水域間で移動している可能性が示唆された。また両年の二時季において,上流と下流の区画間において共通種がみられ水路網内における植物の繁殖体の移動が示唆された。2010年の二時季において優占度の高かった種は,バイカモとナガエミクリ,コカナダモの3種であった。これらは全調査区画のほとんどで優占していた(夏季・出現区画数の約83%)。TWINSPANの結果,上記3種が優占する区画について,各々が単一で優占する3群落型と,コカナダモと他2種が同時に優占する2群落型,バイカモとナガエミクリが優占する群落型タイプの計6群落型に分けられた。また,群落型と河川清掃や藻刈り,重機を用いた浚渫の範囲とには関係があった。特に重機による定期的な浚渫及び年3回の河川清掃を行い,下流域に立地には,バイカモとナガエミクリの優占によって特徴付けられる群落型が分布し,出現種数も多かった。流水環境の水生植物群落の分布は人為的攪乱と強い関係のあることが示唆された。