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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-081

水田生態系の空間異質性がアマガエル個体群の空間構造に与える影響

*武田智, 片山直樹, 宮下直(東大・農・生物多様性)


水田の両生類個体群は、生活史のなかで、田面の水環境と(幼生期)と畦畔の草地(成体期)の両方の生息地を利用する。これらの環境は農事暦に沿った管理によって時間的な異質性をもつ。さらに管理の方法やタイミングが水田ごとに異なるため、空間的な異質性も持ち合わせている。しかし、このような水田の時空間的な異質性と個体群の空間構造の関わりを示した研究はほとんどない。

本研究は水田に生息するニホンアマガエルに着目した。本種の成体は、畦畔の草地などに生息し、春に湛水された田面に産卵する。水田や、畦畔ごとの環境異質性が明確で、評価が容易である。そこで、アマガエル成体及び変態個体の空間構造に対して、水田と畦畔の異質性が与える影響を探ることを目的とした。同時に水田の湛水状態と畦畔ごとの草丈を記録した。

2010年4月-7月、茨城県霞ヶ浦南岸の2つのサイト(各々64、62枚の圃場)でアマガエル密度と環境要素を調べた。アマガエルは、成体と上陸直後の変態個体に区別して記録した。その結果、成体は4月下旬、変態個体は6月下旬に個体数が最大になり、300m-400mのパッチ状の空間構造を形成していた。畦畔ごとの密度と環境要素との関係について一般化線形モデル(GLM)を用いて調べた結果、草丈が中程度(約20cm)の畦畔で成体及び変態個体が多く見られた。また、成体は春の湛水時期が早い水田で多く見られた。空間自己相関を考慮したCARモデルの結果でも、GLMと同様の傾向が見られた。

これらの結果は、水田環境の空間的異質性が、アマガエルの成体及び変態個体の空間構造を決める重要な要因であることを示唆した。


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