ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-139
*王 新, 中坪 孝之, 中根 周歩 広島大・院・生物圏
暖温帯常緑広葉樹林の土壌炭素フラックスに対する気候変動(高温、高CO2)の影響を調べるため、オ-プントップチャンバ-を用いた操作実験を行った。2002年10月に広島大学東広島キャンパス内に設置された6基の大型オ-プントップチャンバ-(横4 m、縦4 m、高さ5 m)に3年生のアラカシ(Quercus glauca)を植栽し、3段階のCO2濃度処理(外気の1、1.4、及び1.8倍)と2段階の温度処理(外気±0℃及び+3℃)の合計6通りの環境条件のもとで育成した。2006年4月から2009年4月にかけて、毎月一回、赤外線ガスアナライザ-を用いたオ-プンフロ-システムで各チャンバ-内の土壌呼吸速度を48 時間連続測定した。また、微生物による呼吸を調べるため、チャンバ-内に根を切断した区画を設け、同様の方法で土壌呼吸速度を測定した。
温度処理については、高温区で微生物呼吸の温度係数Q10が小さくなる傾向が認められたが、全土壌呼吸ポテンシャル(地温15℃時の土壌呼吸速度)およQ10には有意な変化が認められなかった。一方、高CO2濃度下では、全土壌呼吸ポテンシャルの有意な増加が認められた、また、土壌呼吸ポテンシャル、Q10および地温から推定した年間の土壌炭素フラックスも高CO2で高くなる傾向が認められ、外気温、CO2濃度1.8倍区では対照区の148%(3年間の平均)に達した。本研究の結果は、暖温帯常緑広葉樹林の土壌炭素フラックスがCO2濃度の上昇に敏感に反応し、将来的に増加する可能性を示している。