ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-140
*佐々木晶子,中坪孝之(広島大・院・生物圏)
河川中流域の河畔域では、しばしば山地森林に匹敵する生産量を持つ植物群落が成立し、多くのリタ-が供給され、(第48回日本生態学会大会)、それらが緩やかに分解されていく(第52回日本生態学会大会)。そして河畔域に貯留されたリタ-は、ひとたび大規模な出水がおきると下流へ流出すると予想される。そこで本研究では、河川中流域からの潜在的なリタ-流出量を推定するとともに、河川の出水パタ-ンが流出量に与える影響を明らかにする目的で、植物群落から河川へのリタ-流出モデルを作成し、10年間の有機物動態についてシミュレ-ションを行った。
モデルでは、毎年起きる小規模出水によって林床から河川水中へのリタ-の移動が起こり、数年に一度生じる大規模出水によって、群落周辺(林床と水中)に貯留されていたリタ-が全て下流域へ流出するというパタ-ンを想定した。出水の規模と頻度の違いを考慮し、西日本の河川中流域における代表的な河畔植生であるネコヤナギ(Salix gracilistyla)群落を対象としてシミュレ-ションを行った。その結果、小規模出水の規模の違いは潜在的リタ-流出量には大きく寄与しない一方、大規模出水の頻度によっては、下流への潜在的リタ-流出量が毎秋のリタ-供給量の15?80%の間で変動することが明らかになった。以上のことから、河川中流域の植物群落が下流域への潜在的な有機物供給源となりえる可能性を持つと同時に、下流へのリタ-流出量は大規模増水の頻度によって大きく異なることが示された。