ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-143
*真嶋 光一郎(京大・農),小杉 緑子(京大・農),牧田 直樹(京大・農),安宅 未央子(京大・農)
幹、枝、粗根などに代表される木質リタ-の分解呼吸は、葉リタ-の分解呼吸に比べると低速であるものの、量的には無視できず、木質リタ-の分解呼吸を理解し見積もることは、森林での正確な炭素循環の解明の上で重要である。これまで木質リタ-の分解に関する研究は、その供給、分布、状態、大きさが不均一であり、分解に長期間を要することから、長期間の重量減少をとらえることで分解速度を求めてきた。しかし、この方法のみでは、環境要因に対する応答性は求め難く、ひいては環境変動や植生変化が炭素循環に与える影響の予測は困難である。そこで本研究では、ヒノキ林内において木質リタ-(幹、枝)分解によるCO2放出速度を直接測定し、その環境応答性を調べた。
測定は滋賀県大津市、桐生水文試験地のヒノキ林において行った。ヒノキ枯死木から得た様々な直径(約0.3-15cm)のサンプル計540個を乾燥区と通常区の各区に設置し、測定対象とした。サンプルは2-3週間ごとに直径階級ごとに一定数を選び、赤外線CO2/H2O濃度計(LI-840,licor)を用い閉鎖循環式チャンバ-法によりCO2放出速度を測定した。この際、温度と含水率を指標とするために、サンプルの表面温度と重量を測定した。
その結果、ヒノキ林における木質リタ-分解呼吸速度は、サンプル毎のバラつきが大きいものの、単位乾燥重量あたり、および単位体積あたりでは、1)表面温度が上昇するほど指数関数的に増加し、2)含水率が減少すると減少し、3)直径が大きいほど減少した。また、単位表面積あたりでは1と2のみ認められた。この結果を踏まえて、本学会では直径の影響を考慮しつつ、ヒノキ林における木質リタ-分解呼吸速度の環境応答性を考察する。