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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-145

汽水域に生息するゴカイ科多毛類における季節的な安定同位体比変動

*金谷弦,高津文人(国環研),佐藤正典,塔筋弘章(鹿児島大・理),今井章雄(国環研)


一般に、ゴカイ科多毛類は、汽水域の底生生物群集の主要な一群である。このうち、日本の本州沿岸の汽水域で多産する種はヤマトカワゴカイHediste diadroma (以下ヤマト)、ヒメヤマトカワゴカイH. atoka (以下ヒメ)、およびイトメTylorrhynchus osawai であり、それらは同所的に出現することがある。彼らは高密度で生息し、底土有機物を活発に摂食するため、汽水域の物質循環過程において重要な役割を担っていると考えられる。そこで本研究では、仙台湾の河口域に生息する3種のゴカイ科多毛類の炭素・窒素安定同位体比(δ13Cおよびδ15N)を比較し、餌利用の時空間変動を生息場所への淡水流入強度との関連から考察した。

ゴカイ類および餌となる有機物を、汽水性潟湖・井土浦内の2地点で2008年3月、8月、12月および2009年3月に採取した。淡水流入口に近い地点Aではヒメとヤマトが、海に近い地点Bではイトメとヤマトが採取された。試料は脱脂し、δ13C・δ15Nを測定した。

ゴカイ科多毛類のδ13Cは地点Aで地点Bよりも8‰も低く(年間平均値)、いずれの地点でも河川流量が増える8月に3.2-6.2‰も低下した。これらは、河川流量が多い場所・時期には、δ13Cが低い陸域由来有機物の寄与が高まることを示唆している。ヒメ?ヤマト間では後者が1.5‰ほど低いδ13Cを示したことから、ヤマトの方が陸域起源物への依存度がより大きいと推定された。一方、イトメ?ヤマト間には有意なδ13Cの違いはみられなかった。カワゴカイ属多毛類は、他の汽水性ベントスがあまり利用しない河川由来有機物を餌として利用することにより、陸域の一次生産を汽水域食物網へと取り込んでいることが示唆される。


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