ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-148
*安立美奈子, 伊藤昭彦(国環研), 石田厚(京大生態研), 中野隆志(山梨環境研), 吉村謙一(森林総研), Wan Rasidah (FRIM), Phanumard Ladpala, Samreong Panuthai (DNP), 山形与志樹(国環研)
グロ-バルな炭素循環において、陸域の土壌有機炭素は土地利用や気候の変化よっては大きなCO2の放出源となる可能性があるため、その環境応答は将来の炭素収支を予測する上で重要な要素となる。本研究では、東南アジアの4つの異なる熱帯林について、現地のデ-タと陸域生態系モデルVISITの両側から推定した土壌呼吸量について検証をおこなった。特に、VISITの土壌圏の水収支計算をバケツモデルからダルシ-則にした場合に、土壌呼吸量の推定値がどのように変化するか、実測デ-タとどのくらい差があるかに着目する。
調査地は、土壌タイプの異なるタイの3つの森林(サケラ-ト:常緑季節林、落葉季節林、メクロン:落葉季節林)および半島マレ-シア・パソ保護林(熱帯雨林)を対象とした。陸域生態系モデルVISITには新たに土壌固相率と、粘土やシルトの割合から求められる6種類の土壌タイプを土壌圏パラメ-タとして入力できるように改良した。土壌タイプから不飽和透水係数を、固相率から土壌水分の飽和度をそれぞれ計算し、ダルシ-則に導入することにより土壌層間の水フラックスを計算した。また、雨期と乾期において野外で計測した土壌呼吸量と土壌水分の関係は、調査地によって傾向が異なった。特に、サケラ-トの常緑季節林と落葉季節林では、ほぼ同じ気象条件にもかかわらず土壌水分量の値が大きく異なった。本発表では、VISITモデルがこれらの違いを推定できるかどうか、また、ダルシ-則によってモデルの精度が向上した点や問題点などについて議論を行う。