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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-149

森林流域における降雨流出時のNO3-流出機構 ?NO3-安定同位体比を用いた検討-

*小田智基,大手信人(東大院農),後藤敏之(東農大),鈴木雅一(東大院農)


近年、窒素酸化物の降下量の増大に伴い、森林流域から河川への硝酸態窒素の流出量が増加することが報告され、下流の河川水質や湖の水質に与える影響が懸念されている。そのため、森林生態系の窒素循環の実態を解明することが重要な課題であり、森林流域からの平水時のNO3-流出機構についてだけでなく、降雨流出時においても的確に評価することが必要であると考えられる。本研究では、神奈川県丹沢山地の源流域である3流域において、2010/7/13, 2010/9/23のそれぞれ総降雨量53mm、158mmの2降雨イベントについて降雨流出時に集中的に採水を行い、渓流水・降水のNO3-濃度・NO3-安定同位体比を計測し、降雨流出時のNO3-の流出機構について検討した。 その結果、平水時の渓流水NO3-濃度(30-40μeq/l)に対して、降雨流出時にはNO3-濃度が50 -60μeq/lに増加した。さらにNO3-中の酸素の安定同位体比(δ18O)は、2流域において平水時には-1-0‰であったが降雨時には2‰に一時的に上昇し、もう1つの流域では、逆にδ18Oが流出水量の増加に伴い-3--2 ‰に低下した。これら結果から、降雨流出時に流出するNO3-も、平水時と変わらずほぼ硝化によって森林内で生成されたNO3-であり、流量増加時でも降雨起源のNO3-の寄与は1%-5%程度であることが示された。さらに、流域によっては流出NO3-のほとんどが地下水起源と考えられる平水時のδ18Oに比べ、降雨時に土壌水の流出成分の寄与が大きくなるとδ18Oが低下することから、地下水中で脱窒が生じ、δ18Oの上昇が起こっていることが示唆された。NO3-安定同位体比を用いることにより、降雨流出時のNO3-流出起源はほぼ硝化由来であり、それぞれの流域の水文プロセスによって流域間の差が生じていることが示された。


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