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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-162

冷温帯の常緑針葉樹林における生物学的手法によるNEPの推定

*渡辺真也, 友常満利 (早稲田大・院・先進理工), 金澤泰斗 (早稲田大・教育), 増田莉菜(早稲田大・人間科), 小泉博(早稲田大・教育)


森林は二酸化炭素の吸収源として注目され、その吸収能力は生態系純生産量(NEP)で評価される。近年の研究では渦相関法でNEPを推定することが多いが、NEPの変動要因の解明や今後の変化の予測を行うためには、それぞれの要素を別々に測定しその変動要因を明らかにすることも必要である。そこで本研究では生態系の個々の要素を別々に測定する生態学的手法を用いてNEPを算出することで、アカマツ林の炭素収支を明らかにするとともに、NEPを決定する主要因を明らかにすることを目的とした。

調査は、35年生のアカマツ林で行った。毎木調査とリタ-トラップからそれぞれ樹木の成長量とリタ-フォ-ル量を求め、その合計を純一次生産量(NPP)とした。また、CWD呼吸量を測定し、根呼吸量を土壌呼吸量から差し引くことで算出した土壌生物呼吸と合わせて従属栄養生物呼吸(HR)とした。NEPは、NPPからHRを差し引いて推定した。

測定の結果、NEP、NPP、HRはそれぞれ1.3、3.6、2.3 tC ha-1 yr-1となり、本調査地のアカマツ林は炭素の吸収源であることが明らかになった。NPPのうち、樹木生長量は全体の39%、リタ-量は61%を占めた。一方HRは土壌生物呼吸量が75%を、CWD呼吸量が25%を占め、CWDの影響は無視できない程度であると考えられた。

また、同様に同地域の落葉広葉樹林のNEP、NPP、HRを算出するとそれぞれ2.4、3.3、0.8 tC ha-1 yr-1であった。アカマツ林と比較すると、HRがアカマツ林で特に大きく、土壌生物呼吸量は約3倍、CWD呼吸量は約8倍もの大きな差があった。

今回の発表では、両林分で見られたこのような違いについて炭素貯留量や森林構造なども含めて議論する。


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