ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-163
*浅野眞希(筑波大・生命環境),田村憲司(筑波大・生命環境),篠田雅人(鳥取大・乾地研),星野亜希(筑波大・生命環境),神田隆志(筑波大・生命環境),恒川篤史(鳥取大・乾地研),東 照雄(筑波大・生命環境)
乾燥・半乾燥地生態系において,風による侵食・再堆積による土壌化学特性の変化は,植物種組成や生産量に多様な影響を及ぼすことが指摘されており,そのメカニズムを明らかにすることが生態系の変動を予測する上で不可欠である.そこで本研究は,砂塵発生が頻発している草原において,風食に伴う砂の移動が表層土壌に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
モンゴル国バヤンオンジュル村付近のステップ地域から、放牧草原(G区)および,2004年に設置された禁牧区柵内(Shinoda et al., 2010)の風成堆積物が認められた地点(S区)を調査対象地点とした.両区において2004〜2008年までの5年間,土壌試料(深度0-5cm,n=5)を採取し,土壌化学性,粒径組成の分析を行った.また,EPMAを用いて砂粒子表面の元素分析を行った.
土壌粒径組成分析の結果,2007,2008年に両区間に有為差が認められ,S区で200μm以上の砂画分が増加し(p<0.01),100μm以下の画分が減少した(p<0.001).S区においてsaltationおよびsurface creepによって輸送された砂画分が表層に堆積したことが示された.土壌粒径組成と土壌化学性の相関分析を行った結果,土壌有機物含量および全窒素量は200μm以上の画分と負の相関(r=-0.600および-0.618),ECとは正の相関(r=0.709)を示した.砂粒子表面の元素分析の結果,K, Ca, Na, Mg, Feが砂粒子表面に付着していることが示された.以上の結果から,有機物含量が少なく,塩類を伴う砂画分の堆積が,表層土壌の化学性に影響を及ぼしていることが明らかとなった.