ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-164
*新井宏受(京大院 農), 徳地直子(京大 フィ-ルド研)
造林により土壌有機炭素(SOC)量が変化することは知られているが、造林後の変化パタ-ン・量には大きなばらつきが存在する。本研究では、安定炭素同位体(13C)・放射性同位体(137Csと210Pbexc)を用いて、造林後のSOC量・動態の変化を明らかにする事を目的とした。
調査は京大フィ-ルド研和歌山研究林内に隣接して存在する天然生モミ・ツガ林と55年生スギ人工林で行った。スギ(C3植物)人工林では、人工林形成以前にモミ・ツガ林を伐採し、ススキ(C4植物)草地として維持されていた。
結果より、SOC stockは人工林で高い値を示した。55年間の積算C供給量には大きな差は見られなかったが、リタ-の質(C/N比)は大きく異なっていた。さらに、ススキ由来SOC量は、林分間でのSOC量の約36%であった。従って、スギ人工林でのSOC量が多くなった要因は、造林前から存在した古いSOCの継続的な保持、及び供給リタ-の質の変化に起因するスギ由来SOCの高い集積速度であった。一方で、放射性同位体の結果から、造林時の土壌攪乱の抑制・造林前後での土壌深層への輸送動態の変化が示唆された。
以上の結果より、本調査地スギ人工林では?造林時の土壌攪乱の制限による初期SOC量減少の抑制、?難分解性リタ-の供給による分解速度の抑制、によりSOCの蓄積が促進された事が推察された。