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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-177

北海道立野幌森林公園内のエゾタヌキにおける疥癬発生状況と個体数変動について

*佐鹿万里子(岐阜連大), 阿部豪(兵庫県立大), 森田達志(日獣大)


野生動物は重度疥癬によりしばしば死亡し、その流行は野生動物の個体群動態に影響を及ぼす。北海道立野幌森林公園では、2002年に初めて重度疥癬エゾタヌキが発見され、その流行が懸念された。そこで2004年5-11月,2005年および2006年の5-9月に同公園内および同公園に隣接する北広島市で捕獲されたエゾタヌキ39個体について採血を行い、血清学的検査法(ELISA)を用いてセンコウヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei:以下SS)感染のスクリ-ニング調査を行った。その結果、2004年に同公園内で捕獲された1頭については重度の脱毛が認められ、痂疲から多数のSSが検出されたが、他の38頭は外観上異常を認めなかった。これに対し、SS抽出抗原を用いたELISAでは、外観上正常であった38頭のうち、2004年に同公園内で捕獲された2頭と2006年に北広島市で捕獲された1頭において、正常タヌキ血清(N=82)より得られたELISA値(以下E値)の平均値+3SD(0.183)を上回る数値が得られた。一方、残り35頭のタヌキのE値は全て低値であった。外観上、異常が認められなかった個体が高E値を示した理由として、臨床症状に先行して抗体価が上昇した可能性、および自然治癒後の回復過程である可能性が示唆されたが、高E値を示した2頭(同公園内で捕獲)は翌年以降生存が確認されておらず、疥癬を発症し死亡した可能性がある。同公園内の調査で確認されたエゾタヌキの個体数は、2003年以降、激減しており、疥癬を含めたその原因解明が待たれている。なお、北広島市におけるエゾタヌキの調査は2007年以降実施しておらず、高E値を示した残り1頭の追跡調査は行っていない。今後、捕獲個体の網羅的な抗SS抗体検査が、個体群における疥癬浸淫度評価の一助になることが期待される。


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