ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-183
*柿岡諒(京都大・院・理),小北智之,熊田裕喜(福井県大・海洋生物資源),渡辺勝敏(京都大・院・理),瀬戸雅文(福井県大・海洋生物資源),奥田昇(京都大・生態研)
湖沼,とりわけその沖合に生息する魚類は,祖先性の河川集団とは顕著に異なる体型を示すことが少なくない.このような体型の変異には,それぞれの集団の生息場所利用と関連していると考えられる.湖沼の沖合のような開放的な環境で定常的な遊泳をするには抵抗の少ない流線型の体が有利になるのに対し,空間的に入り組んだ環境で非定常的な遊泳をするにはずんぐりした体が有利になるといったことが要因である可能性が示唆されているが,検証例は乏しい.琵琶湖とその周辺に生息するタモロコ属魚類のペア種にも同様の現象が認められ,広大な沖帯に生息する固有種ホンモロコの体形は、流入河川に生息する祖先性の近縁種タモロコと顕著に異なる.本研究では,タモロコ属ペア種をモデル系として,その体形変異と遊泳能力との関係を検証することを目的とし,自然集団および様々な形質を分離させた両種間のF2雑種を用いて,持続的遊泳速度および最大遊泳速度を測定し,諸形態との比較を行った.この結果をもとに,本ペア種で認められる形態分化が,対照的な生息環境における遊泳活動と関連した適応進化の産物であることを議論する.