ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-192
*中山直紀(宇都宮大・院・農),小金澤正昭(宇都宮大・演習林),奥田圭(東京農工大・院・連農)
栃木県では、近年、ツキノワグマによるクマ剥ぎ被害が増加しており、深刻な林業問題となっている。被害地の施業履歴や、周辺環境との関係を把握し、被害の発生に影響を及ぼす要因を解明することができれば、被害対策を効果的に行うことが可能になる。先行研究では、クマ剥ぎ被害地の傾向として、広葉樹林に隣接した場所や、尾根沿い、下層植生が乏しい場所等で多く被害が発生することが指摘されている。しかし、栃木県高原山地域では、牧場の家畜飼料を餌資源とするクマが多数存在している。アメリカの研究事例では、クマ剥ぎの代替餌を給餌することで被害を軽減できることが報告されており、そのため、牧場の存在がクマ剥ぎの発生要因に強く関わっていることが考えられる。
そこで本研究では栃木県高原山周辺を調査地域とし、クマ剥ぎの被害と牧場施設を含めた周辺環境の特性との関係を明らかにすることを目的とし、特に牧場施設の存在に注目して考察した。
調査は栃木県高原山周辺に存在する造林地内にランダム設定したポイントにおいて、0.25haの方形プロットを設置し、毎木調査及び被害量調査を行った。また、同地域周辺では、関東森林管理局による栃木県国有林のクマ・シカによる被害量調査が行われているため、今回のデ-タと共に解析対象とした。調査プロット毎のクマ剥ぎ被害率と周辺環境との関係について一般化線形混合モデルを用いて解析した。