ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-253
*新垣誠司(琉大・熱生研), 向草世香(JSTさきがけ・長大水産・琉大熱生研), 酒井一彦(琉大・熱生研)
造礁サンゴ群集は、サンゴ礁生態系の中心的存在として、生物多様性の根幹をなしている。近年、その衰退が世界各地で報告されており、サンゴ群集の形成と維持に関わるメカニズムの解明は学術的にも社会的にも重要なテ-マとなっている。そこで、本研究は造礁サンゴ群集の優占グル-プであるミドリイシ類(Acropora属)とその群体形状(樹枝状、コリンボ-ス、テ-ブル状)の違いに着目し、生活史特性を明らかにすることを目的とした。西表島の北側2地点(ヒナイ、インダビシ)の水深約3mの平らなリ-フ上に定点方形区(5×5m)を設け、定期的に観察することで枠内に出現するサンゴ群体の変遷を追跡した。今回は、2004年から2008年まで1年ごとに撮影した画像を解析に用いた。なお、画像デ-タから測定した群体の投影面積の変化量を成長量とし、生きたポリプの有無および群体の消失で群体の死亡を判断した。解析の結果、群体形状によって成長率と死亡率が異なり、両調査地点においてどの群体形にも成長率と死亡率に年変動が見られることがわかった。また、観察された年変動パタ-ンと調査期間中に起こった白化や台風との関連から、群体形状によって環境変化から受ける影響が異なる可能性が示唆された。群体形状ごとに見られた生活史特性をもとに、造礁サンゴ群集のダイナミクスについて議論する。