ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-311
*小野田幸生,佐川志朗,上野公彦,尾崎正樹,久米学,相川隆生,森照貴,萱場祐一(自然共生研究センタ-)
中央流速との関係に着目した水際の緩流域の重要性を検証するため、大規模実験水路で流速を段階的に増加させ、オイカワによる水際の緩流域の利用頻度が変化するかを調べた。
流速を弱める装置には、桟粗度(はしご状構造物、幅0.5m)を用い、流路(幅1.5m)内の片側の岸の底面に設置した。流路横断面を上下左右方向に9等分し(計9区画)、中央区画の流速を5段階(0, 10, 26, 42, 70cm/s)に変化させ、オイカワ(2体サイズ群:体長約10cmと約5cm)の利用区画を記録した。
中央流速10cm/s以下の時には、両サイズ群とも中央区画を利用し、桟粗度が設置された水際を特に利用しなかった。一方、中央流速26cm/s以上の時には、小サイズ群は桟粗度の直上の区画を、大サイズ群は横断方向中央の垂直方向下段の区画を多く利用した。利用区画が変化した中央流速10cm/sと26cm/sとで流速分布を比べると、前者では全区画で流速10cm/s以下だったのに対し、後者では桟粗度の直上(3cm/s)以外の区画では17cm/s以上だった。
この利用場所の変化は、各体サイズ群の流速耐性を反映した結果と考えられる。魚類の流速耐性の目安は、体長の2-3倍の流速であるとされる。供試魚に適用すると流速耐性は小サイズ群で10-15cm/s、大サイズ群で20-30cm/sとなる。中央流速10cm/sの時は、どの区画も両体サイズ群の流速耐性以下であり、オイカワの生態特性を反映した場所利用になったのかもしれない。一方、中央流速26cm/sの時には、流速耐性を超える流速域も存在したため、流速の遅い場所に忌避したと考えられる。
本研究では、中央流速が26cm/sという比較的低い流速条件から緩流域が利用されており、緩流域を形成する水際域は野外でも広く重要であると考えられる。