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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-316

滋賀県南東部の水田地帯におけるハルリンドウの分布と生育地の環境条件

*今西亜友美,今西純一(京大・院・地環),河瀬直幹(甲賀市・自然館),夏原由博(名大・院・環境)


ハルリンドウ(Gentiana thunbergii (G. Don) Griseb.)は,小型の越年草で,同じリンドウ科で秋に開花するリンドウとは異なり,3-5月に青紫色の花をつける。滋賀県では比較的多くの場所で見られるが,近隣の大阪府では絶滅種,京都府では絶滅寸前種に指定されており,全国的に減少しつつある植物の一つである。本種の本来の生育地は湿地であるが,滋賀県南東部の湧水地域では水田の畔やため池の堤でも生育が確認され,これらの場所は代替地として機能していると考えられる。しかし,近年,この地域においても放棄水田が増加し,ハルリンドウ個体群の存続が危ぶまれている。本研究では,代替地である湧水地域の水田の畔やため池の堤において,ハルリンドウの生育に影響を及ぼす環境条件を明らかにすることを目的とした。

滋賀県南東部のハルリンドウが生育する水田の畔26ヶ所,ため池の堤2ヶ所の合計28ヶ所を調査対象地とした。2010年4月下旬から5月中旬にかけて,各調査対象地においてハルリンドウの個体数を記録し,生育地の斜面方位角と斜度,地表面の相対日射量,土壌の体積含水率,周囲の草丈を計測,記録した。

調査対象地の土壌の体積含水率は35.0-70.4%と比較的多湿であった。ハルリンドウの個体数(対数変換)は,地表面の相対日射量と中程度の有意な正の相関があったが,その他の環境条件とは有意な相関はなかった。また,相対日射量と周辺の草丈にはやや強い有意な負の相関があった。これらのことから,代替地である湧水地域の水田の畔やため池の堤では,土壌が比較的多湿であり,明るい環境が保たれていることがハルリンドウの生育を可能にしていると考えられ,ハルリンドウ個体群の存続には,水田耕作にともなう草刈りといった人為的な管理が必要であることが推察された。


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