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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-317

リュウキュウアユの河川内分布に影響を及ぼす環境要因の探索

*安房田智司, 阿部信一郎, 鶴田哲也, 井口恵一朗(中央水研)


奄美大島産の固有亜種であるリュウキュウアユは、島内全体の生息数が数千個体に落ち込み、絶滅の危機に瀕している。両側回遊性の本種は、その生活史の大部分を河川の中流域で過ごし、河底の付着藻類を食べて成長する。近年の個体数減少の背景には、河川改修や森林荒廃に起因する流量減少や土砂流入、それに続く摂餌環境の荒廃が想定される。そこで本研究では、成長期の行動様式や摂餌空間を通して、本種の河川内分布に影響を及ぼす環境要因の探索を試みた。

調査は2010年8月、役勝川の上流、中流、下流部にそれぞれ設置したおよそ450mの流程区間内で行った。流れに沿った環境変化を目安に調査区間を10-21区画に分け、潜水観察によって各区画内のリュウキュウアユの密度を測定した。あわせて、区画内の物理環境(水深、底質、日射条件など)ならびに餌の競合する可能性のあるボウズハゼとイシマキガイの密度を調べた。その結果、成長期のリュウキュウアユは上・中流部を主な生息場として利用するが、とりわけなわばり個体は、中流部において最も高い頻度で出現することがわかった。流程内の微小生息地に着目すると、上・中流部ともに高い藻類生産力が予想される日射条件の良い場所に分布が偏る傾向が認められた。さらに、相対的に日射条件の劣る上流部では、なわばり個体と群れ個体がそれぞれ、上空の開けた瀬と水深があり流れの緩い淵に分かれて生息する傾向が認められた。また、全体を通じて、競合種の存在がリュウキュウアユの生息場所利用に影響を与えるという証拠は得られなかった。

以上より、本種の河川内流程分布には物理的環境要因が大きく関与していることが明らかとなった。また、行動様式の採択には河川内の環境変異が影響を与えることも示された。


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