ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-320
*片野泉(土研・自然共生研セ,Univ. Oldenburg),土居秀幸(Univ. Oldenburg),根岸淳二郎,皆川朋子,萱場祐一(土研・自然共生研セ)
貯水ダムは,河川が本来もっている輸送機能などの連続性を絶つため,下流の河川環境にさまざまな影響を与え,底生動物などの生物相変化・河川の生態機能の変化を引き起こす。今日では,ダムが下流生態系に与える影響を軽減するため,土砂還元,フラッシュ放流など様々な方法が提案されている。しかし,自然に存在するダム下流で合流する支川に注目してみると,支川が合流することにより,ダムの影響をうけた河床環境が改善され,生物群集も再び変化すると示されている(Katano et al. 2009)。しかしこれまでのところ,支川流入によってどの生物が強く影響を受けるのかは分かっていない。本研究では,一般的なダム下流で合流する支川の影響を評価するため,様々な支川規模,支川合流位置を持つ近畿・中部地方の11ダム河川における底生動物群集とそれに関わる生息場所環境の調査を実施した。
底生動物の種数,多様性指数,群集類似度などの種多様性,群集構造の指標を目的変数,支川の合流距離,河床材料などの物理化学的環境デ-タを説明変数とした一般化線形混合モデルを構築して,支川流入がダム下流の底生動物群集の種多様性および群集構成に与える影響を評価した。その結果から,貯水ダム下流における底生動物群集の構造と機能の保全に重要な要因を指摘し,支川の効果を考慮に入れた効果的かつ簡便な軽減案を提案する。
参考文献:Katano et al. (2009) Longitudinal macroinvertebrate organization over contrasting discontinuities: effects of a dam and tributary. JNABS 28: 331-351.