ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-327
*横山真弓(兵庫県立大学),斎田栄里奈,中村幸子(森林動物研究センタ-),森光由樹(兵庫県立大学),片山敦司,加藤洋(野生動物管理事務所)
近畿圏におけるツキノワグマは1990年代に個体数が減少し、絶滅リスクが増大した。そのため、狩猟を禁止し、絶滅を回避しながら被害を低減させるための対策が各都道府県で始まった。兵庫県では、2003年に策定された特定計画を実行するため、保護管理体制を構築し、人為的捕殺を避ける対策を行ってきた。その結果2009年までに個体数は回復傾向を示した。しかし、2010年の大量出没ではこれまでの出没に対する考え方では対応できない場面も発生した。結果的に兵庫県内だけで12月までにのべ101頭の有害捕獲が発生し、そのうち忌避条件付け放獣は30頭に達したが、70頭は殺処分となった。またイノシシ罠による錯誤捕獲は110件発生し、原則的には放獣された。これまでの大量出没年の4倍にのぼる数字となった。
本研究では、2010年の捕獲個体に関する情報から、2010年の大量出没の要因を抽出することを目的とした。有害捕獲とイノシシ罠による錯誤捕獲では、平均年齢に有意差は見られなかったが、年齢構成と性別に違いがみられた。錯誤捕獲では、7割をオスが占めたが、有害捕獲では性比は同じであった。0歳を除いた年齢構成は、有害個体で5?9歳までが41%、次いで10歳?14歳が28%であり、1‐4歳までの若齢は17%と低かった。錯誤捕獲では、5?9歳までが49%と最も多く、次いで1‐4歳が22%であった。有害個体は5歳以上の割合が8割を超えていたことから、餌資源の配置などをすでに学習している経験値の高い成獣が、資源不足の際に直ちに人里近くにあるカキ等の資源を利用する行動をとったことなどが考えられた。