ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-329
赤坂宗光(国環研), 石濱史子(国環研), 藤田卓(日本自然保護協会),竹中明夫(国環研)
絶滅が危惧される生物を保全する上で、自然公園を含む保護区域は、重要な役割を果たす。しかし、保護区域は生物多様性だけではなく、景観の美しさや文化的な価値の保護を目的としても設置される。このため保護区域は必ずしも生物の生育地を保全する上で効果的に配置されているとは限らない。従って、生物多様性のための将来的な保護地域のデザインを検討するには、まず現状の保護区域の範囲が妥当かの評価を行う必要がある。本発表では、日本の主要四島を対象域とし、全国版レッドリストに掲載されている維管束植物(1550種)のうち、分布域が国設の自然公園(国立公園・国定公園)に全く含まれていない種の数と、十分な面積が含まれていない種の数を明らかにした。自然公園に含まれる分布域の面積が十分かの判断は、global gap projectの基準(潜在的な分布域の面積が1000km2以下の種はその分布域の全て;潜在的な分布域が25×104km2以上の種はその10%;分布域の面積が2つの閾値の間の種は面積に応じて内挿した比率が含まれるべき)に従った。そして種の生育地タイプにより、自然公園に分布域が含まれにくい傾向があるか検討した。各種の分布情報はレッドリストの基本デ-タに基づいたが、これらは非公開を前提に日本植物分類学会絶滅危惧種問題専門委員会の承認を得た上で用いた。また、既設の自然公園の立地環境(標高、土地利用など)の特徴を、それらと既設の自然公園と同等面積の範囲を、出現種数、固有性、相補性などの基準でそれぞれ選択した場合の立地環境と比較することで把握した。その結果、既設の自然公園は,絶滅危惧植物の生息地を保全する上では必ずしも効率的に設定されていないことが明らかになった。さらに詳細な解析ふまえ,新たに保護区域を選定する場合に優先度が高い生息地タイプや立地環境について議論する。