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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-335

オオタカ雄成鳥の行動圏内の環境選択-山地部森林地帯の場合-

*堀江玲子(オオタカ保護基金・宇大・農),遠藤孝一,野中純(オオタカ保護基金),山浦悠一(北大・農),松浦俊也,尾崎研一(森林総研)


オオタカの環境選択に関する研究は、国内では主に平野部の森林と農耕地が混在する地域で行なわれ、林縁部を選択することがわかっている。一方山地部森林地帯に生息するオオタカの研究は国内では少ない。今後オオタカの保全を考える上で、山地部での環境選択を明らかにすることは重要である。

そこで2006年の繁殖期と非繁殖期に、栃木西部の山地部で繁殖中のオオタカ雄成鳥3個体を捕獲し、発信機を装着してラジオテレメトリ-調査を行なった。ラジオテレメトリ-調査で得られた観察点(オオタカがいた位置)から繁殖期と非繁殖期の固定カ-ネル法95%行動圏を推定し、行動圏内にランダムに位置する1,000地点をランダム点とした。行動圏内の大部分を占める森林に位置する点を解析対象とし、観察点を1、ランダム点を0とコ-ド化したものを応答変数としたロジスティック回帰分析により環境選択を解析した。説明変数は森林タイプ(植林以外の森林と植林)、林縁までの距離、斜面の位置(観察点またはランダム点が斜面のどの部分に位置したか)とした。また、巣からの距離による影響を考慮するため、巣からの距離の1次項と2次項も説明変数に加えた。

AICcに基づいた複数モデル推測を用いて各変数の重要性を検討した結果、山地では平野部とは異なり林縁部の重要度が低いことが明らかになった。また一部の個体では斜面下部を選択的に利用していた。斜面下部では樹木の生育がよく、さらに林道や沢が通っていることが多いことから、オオタカが飛翔しやすく狩りに適した環境である可能性があり、オオタカはそのような場所の近くを選択したと考えられる。今回は3個体のみと少なく個体差も大きかったため、今後さらにサンプル数を増やすと共に、林分構造や餌動物の分布や季節変化についても調べていく必要があるだろう。


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