ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-346
*星屋明孝(岐阜大・応),村瀬豊(岐阜大・農),中村大輔(岐阜大・連農),松本康夫(岐阜大・応),八代田千鶴(森林総研),鈴木正嗣(岐阜大・応)
ニホンジカによる農作物被害は中山間地域において深刻な問題である。農作物被害の研究は被害が深刻な地域でおこなわれてきたが、被害発生の初期段階における対策が重要であると考えられる。本研究はシカ被害の初期段階である地域において、生息状況、被害および住民の意識に関する調査を実施し、現状と意識との関係を検討した。
調査は岐阜県加茂郡白川町の5集落を対象とした。生息状況調査は2つの方法で実施した。(1)糞塊法を2009年9月から2010年11月(猟期除く)に月2回の頻度でおこない、併せて(2)スポットライトカウントを2009年11月、2010年5月、同年10月の3回、各5日間実施した。両結果から生息密度を推定した。被害について、イネ・ダイズを対象として2010年6月から10月まで、月2回の頻度で侵入された農地を調べた。侵入された農地を従属変数として、林縁、河川、宅地、未利用草地との距離関係、斜面や地形の曲率、柵との関係について一般化線型モデルにより、最適モデルを探索した。集落住民の被害意識についてアンケ-ト調査を実施した。
生息状況調査の結果、対象地はシカが低密度であることが示された。被害調査の結果、「シカ用柵のある農地」が最も侵入されやすく、宅地から離れ、未利用草地や林縁、河川に近く、地形の曲率が高い農地で侵入されやすいことが示された。一方、アンケ-ト調査において「電気柵の効果が高い」、「山際での被害が多い」という意識が強く、被害の現状と意識の間に相違がみられる結果となった。全国的にも、被害が深刻化する要因のひとつとして、初期段階における住民の認識が不十分であることが示唆される。