ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P2-351
*岡本奈保子(京都学園大学バイオ環境学部),今村彰生(京都学園大学バイオ環境学部)
大規模な農地基盤整備を経験していない、伝統的畦畔が残存する京都府亀岡市曽我部町において、植物群集を調査した。季節変化や、畦畔の構造ごとの違いや微環境による違いを検証した。同時に、亀岡市千歳町の基盤整備後の水田畦畔とも比較した。
本調査では、岡本&今村(2009)の調査に引き続いて、曽我部町の伝統的畦畔の特徴である、石組畦と盛土畦について、それぞれの畦の部位(前畦、平坦面、畦畔草地、小溝、中畦)ごとに植物群集の在不在デ-タを集成した。曽我部町で2010年4月から2010年10月にかけて、畦12地点について植生調査を行った。また、2ヶ月ごとに調査して季節変化についても検証した。基盤整備後の千歳町については、畦5地点について2010年6月から7月にかけて各地点1回の植生調査を行った。
畦全17地点で50科189種を記録した。伝統的畦畔では49科170種、基盤整備後の水田畦畔では27科87種であった。農地基盤整備前後の部位別に在、不在デ-タをもとに分類学的な重みづけを用いてクラスタ-解析をした。結果、農地基盤整備後の畦を3つの部位ごとに見たとき、畦畔草地に生育する植物の種組成は、前畦に生育する植物群集と共通性が高かった。また、伝統的畦畔を季節ごと、畦組成、畦部位別に見たとき、畦の構造より季節ごとに植物群集の共通性が高かった。特に、田植え前の4月に記録した植物群集は、田植え後の6月から稲刈り後10月に記録した植物群集と共通性が低かった。植物群集を生活型ごとに分け、季節ごとに見たとき越年草は、4月にもっとも出現し、その後は少数種のみ出現している。これら、畦畔植物群集の季節変化と生活型、さらに畦の管理時期との関係についてもは今後の課題としたい。