ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-003
*萩原陽介,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命)
水分供給の時間的不均質性(水分供給頻度の違い)が単植下の植物の成長におよぼす影響は、種間で異なる。そのため、水不均質性は群集構造を変化させるとの仮説が提唱されている。しかし、水不均質性に対する植物の反応は、近隣個体の資源吸収などを介した個体間相互作用によって変化すると考えられる。そこで、複数の草本種を栽培し、混植による実際の群集(種間相互作用あり)と単植の和による仮想群集(種間相互作用なし)を比較することで、個体間相互作用を評価して、群集構造に対する水不均質性の影響を実験的に検討した。
材料には、2次草原で普遍的な5種(シロツメクサ、ヘラオオバコ、ハコベ、ギョウギシバ、ホソムギ)を用いた。水不均質性(高・低頻度給水)、栄養塩量(富・貧栄養)、個体数(5・25個体)の3要因を設定した。5個体の仮想群集は単植1個体の5種の和から、25個体は単植5個体の5種の和からなる。群集構造の指標に、処理ごとの均等度を算出した。均等度への処理の影響はモデル選択により解析した。実際の群集と仮想群集で選択される要因の違いから、個体間相互作用の影響を評価した。
25個体の群集は、富栄養では高頻度給水で5種の現存量が均等で、低頻度給水より均等度が高かった。貧栄養では低頻度給水で均等度が高かった。5個体の群集では水不均質性の均等度に対する影響は認められなかった。25個体の仮想群集では水不均質性の均等度に対する影響は認められなかった。5個体の仮想群集は、富栄養では高頻度給水で、貧栄養では低頻度給水で、均等度が高かった。
個体間相互作用は、水不均質性に対する植物の反応を変化させた。そのため、水不均質性による群集構造の変化は、水不均質性に対する単植下での構成種の反応からは予測できない。水不均質性が群集構造におよぼす影響の検討には、個体間相互作用を評価すべきである。