ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-006
*鍵本忠幸(岐阜大院・応用生物),加藤正吾,小見山章(岐阜大・応用生物)
半寄生性常緑低木であるヤドリギは、鳥によって樹冠部に種子散布され定着する。このような散布・定着環境である森林の林冠構造は、ヤドリギの分布に影響を与えている可能性がある。本研究では、ヤドリギの分布と樹木個体周囲の立木本数との関係を調べ、林冠構造がヤドリギの分布に及ぼす影響を検討した。
落葉樹林に170m×190m(標高約1050m、岐阜県高山市)の調査プロットを設置し、樹木のDBH(≧20cm)、樹種、立木位置、ヤドリギの有無を記録した。また、地形図より立木位置の標高を求め、アロメトリ-式により、DBHから樹高と樹冠投影面積を推定した。
立木位置を中心とする円内に入る樹木をカウントし、各樹木個体周囲の立木本数を林冠構造の指標とした。算出方法は、立木位置、樹冠サイズ、梢端高(標高+樹高)を単独あるいは組み合わせた6つとした。立木本数の算出範囲は、半径1mから最大30mまで1m刻みで変化させた。
独立変数に個体周囲の立木本数、従属変数にヤドリギの有無をとり、一般化線形モデル(GLM)によるロジスティック回帰分析を行った。各モデルの回帰係数、p値を算出し、モデルの有意性を調べた。またAICからモデルの妥当性を比較した。立木本数の算出方法および算出範囲の変化にともなう回帰係数、p値、AICの推移から、林冠構造のスケ-ルの影響を検討した。
GLMの結果、樹木個体周囲の立木本数はヤドリギの有無に有意な負の効果を示した。AICは算出範囲の拡大にともなって低下し、半径20m前後から一定となった。また立木位置のみを考慮したモデルよりも、立木位置に加え梢端高を考慮したモデルの方がAICが低下する傾向を示した。
結論として、周辺の立木本数が少ない樹木ほどヤドリギの分布する可能性が高く、林冠構造の指標としては、梢端高および他個体の樹冠サイズを考慮した場合が最適であることが明らかとなった。