ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-008
*鈴木乾也・可知直毅・鈴木準一郎(首都大・理工・生命)
植物群集の多様性は、強すぎず弱すぎない攪乱で、高く維持されるといわれている。また、根食の影響で、群集の遷移過程も変化することが知られている。そこで、根への攪乱が、地上部の攪乱と同様に、群集構造に影響をおよぼすという仮説を実験的に検討した。
3種のウキクサ(ウキクサ、コウキクサ、アカウクキサ)の人工群集を用い、根の切除を攪乱とした栽培実験を人工気象室で行った。根の切除回数である攪乱頻度(高:2日おき6回、中:3日おき4回、低:4日おき3回)と、根の切除量である攪乱強度(強:根長の100%切除、弱:根長の50%切除)を要因とし、コントロ-ルとともに非対称に組み合わせ(6水準)、それぞれに栄養塩条件(富、貧)を設け、合計12処理(16反復)とした。12日間の栽培中は、2日おきに葉状体面積を測定した。刈り取り後には乾燥重量を求めた。
攪乱強度が強いと、群集の収量と葉状体面積は減少した。攪乱による群集収量の減少の程度は、栄養塩条件によって変化した。また、攪乱強度と栄養塩の交互作用が、葉状体面積で有意にみられた。3構成種の現存量の均等度(Simpson’s D)を、攪乱が群集構造におよぼす影響の評価とした。均等性は攪乱下で高く、貧栄養下では攪乱の効果が有意に認められた。攪乱頻度と攪乱強度と均等度の関係をパス解析したところ、攪乱強度は直接に、攪乱頻度は攪乱強度の効果を強めることで間接的に、群集の収量を減少させていた。群集の収量が減少すると、現存量の偏りが小さくなった。
以上より、攪乱に起因する収量の減少は、構成種の均等度を高めたと考えられる。これは、地上部と同様に根への攪乱が、群集の種多様性の維持に、一定の役割を果たすことを示している。植物群集に攪乱がおよぼす影響の理解には、地上部だけでなく根を含めた検討が必要である。