ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-010
*間島翔,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命)
植物にとって資源である水は、攪乱要因にもなりえる。また浸水等の水による攪乱への反応は、植物種によって異なりうる。しかし、植物の成長に、地下部全体の継続的な浸水が及ぼす影響の定量的な知見は、いまだに限られている。そこで、シロツメクサとアカツメクサの成長に対する浸水期間の影響を栽培実験により評価した。
本実験では、5水準の浸水条件(6日間の浸水期間と4日間の退水期間の組み合わせの12回繰り返し・11日間の浸水期間と4日間の退水期間の組み合わせの8回繰り返し・16日間の浸水期間と4日間の退水期間の組み合わせの6回繰り返し・26日間の浸水期間と4日間の退水期間の組み合わせの4回繰り返し・浸水しない条件)を設定した。そして120日間の処理後、刈り取り、地上部?地下部の乾燥重量を測定した。
シロツメクサとアカツメクサの両種で、処理間で地上部乾燥重量に有意な差があった。シロツメクサでは浸水しない条件で、6日間の浸水条件よりも地上部乾燥重量が大きく、浸水する条件の地上部生物量は、浸水しない条件の約半分だった。一方、アカツメクサは浸水する条件の地上部乾燥重量が、浸水しない条件よりも大きい傾向があった。さらに、6日間の浸水条件と比べると、11、16、26日間のより浸水期間が長い条件の方で、大きい傾向が認められた。また、アカツメクサの浸水する条件下の地上部生物量は、浸水しない条件の約2倍となった。
両種を比較すると、シロツメクサは浸水に対して耐性が低く、一方アカツメクサは比較的高かった。この結果は、シロツメクサは時に湿地で見られるが、アカツメクサは見られないという先行研究による知見とは異なった。今後は、より長期間の浸水の影響や浸水時期の季節的な影響などを評価する必要がある。