ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-016
*森戸寛(岐阜大院・応用生物),加藤正吾(岐阜大・応用生物),花岡創(森林総研・林木育種セ),小見山章(岐阜大・応用生物)
付着根型つる植物であるイワガラミとツルアジサイは、同一林分に生育しているにもかかわらず、同一ホスト上に登攀していることは多く観察されない。つる植物のホスト選好性を決定する要因が、つる植物が生育する林床環境の分離であれば、つる植物の種の多様性は、林床環境のバラエティにより決定されている可能性がある。本研究では、林床に生育する環境条件において、両種の分布に同一性がみられるかどうかを明らかにし、ホスト選好性について議論した。
岐阜大学位山演習林 (岐阜県下呂市)、トドマツ人工林(標高1100m)に調査プロット(0.45m×18m)を設置した。調査プロットで両種の直立茎の分布と、積算PPFDと土壌体積含水率を測定した。調査プロット周辺において、両種の当年生匍匐茎の全長、節数、積算PPFDの測定を、さらに両種の葉を採取しLMAの測定を行った。また、同演習林内で両種の種子を採取し、発芽実験を行った。
解析した結果、イワガラミは光環境に対して分布密度が一定であったが、ツルアジサイはイワガラミより積算PPFDの高い場所で分布密度が高かった。土壌体積含水率は、両種の分布密度にはあまり影響していない傾向を示した。イワガラミに比べツルアジサイの当年生匍匐茎は、明るい場所に分布し、全長が短く節数が多かった。ツルアジサイのLMAはイワガラミより高い値を示した。両種の発芽率は、暗所で0%、明所で40%以上の値をともに示した。
イワガラミに比べツルアジサイの分布は明るい光環境に偏っていた。両種は光発芽種子であった。LMAはイワガラミよりツルアジサイで高く、両種の差異は光合成速度を反映している可能性がある。以上の結果から、両種が同一の支持ホストに登攀することが少ないのは、林床における生育適地の光環境の差異によるものであると考えられた。