ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-045
*松岡宏明 ・山路恵子 ・小林勝一郎(筑波大院・生命環境) ・秋山 克((株)地層科学研究所)
先行研究では、波崎海岸に優占していたコウボウムギ(Carex kobomugi Ohwi.)とコウボウムギ根内から分離した細菌に着目し、この二者間の相互作用が相利的である可能性が示唆された。そこで本研究では、シデロフォア産生能とリン可溶化能を有する細菌菌株をコウボウムギ実生に接種することで、植物の成長にとって細菌が促進的に寄与するか否か検討することを研究目的とした。
接種試験には茨城県波崎海岸で採取した土壌とコウボウムギ種子を、また供試菌株はBacillus属(BS)、Pseudomonas属(PF)、及びRhizobium属(RS)を用いた。種子は発芽誘導処理後、滅菌土壌と未滅菌土壌に移植した。接種菌株は1×108 CFU/ mlに調製し、各実生の地際に3 mlを接種した。明期35℃12時間/ 暗期15℃12時間の条件下で4週間後、同条件にて各菌株を再接種し、さらに4週間生育させた。その後、各実生個体について、成長量(乾燥重量)の評価及び無機成分(N、P、Fe、Mg、Ca、K、Na)の分析を行った。また、根からの細菌の再分離も行い、内生量を算出した。
滅菌土壌を用いた接種試験では、対照区に比べて、BS区が最も地下部の成長量が高かった。内生する細菌量ではBS区が高い傾向にあった。実生の無機成分濃度ではPF区でNが、BS区でFeが有意に高かった。本接種条件では内生細菌は特に実生の根部成長に促進的に寄与することが示された。中でもBacillus sp.が最も実生成長を促進し、他の菌株に比べて根に定着したと考えられたことから、顕著な接種効果を示した菌株と結論した。発表では、未滅菌土壌を用いた接種試験の結果も踏まえ現地での接種効果の持続性を、実生の成長量と無機成分濃度から内生細菌による成長促進の機構を考察する。