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ESJ58 一般講演(ポスタ-発表) P3-048

日立鉱山に生育する植物の重金属蓄積能

*中村隼人(筑波大・生物資源),山路恵子,小林勝一郎(筑波大院・生命環境)


1.背景・目的

重金属汚染土壌の浄化法として、金属蓄積植物を用いたファイトレメディエ-ションが、低コストで環境への負荷が小さいため注目されている。日立鉱山の土壌には高濃度の重金属が存在しているため、重金属に耐性を持ち、高濃度で体内に蓄積させる植物が生息している可能性がある。そこで本研究では、多くの植物が繁茂する夏期の調査を通じて、日立鉱山に生育する植物の重金属蓄積能を明らかにすることを目的とする。

2.方法

2010年5、7、8、9月にかけて、日立鉱山に繁茂していた植物(タネツケバナ、クサレダマ、クマザサ、ヘビノネゴザ、クサイ、オカトラノオ、ヒヨドリバナ)を各4個体採取し、各部位ごとに分け、乾燥後、硝酸分解を行った。7、9月には各植物の根部周辺の土壌(5~10 cm)を4ヶ所から採取し、混合し風乾後、硝酸・過塩素酸分解を行った。酸分解試料はICP分析により、Cu、Zn、Ni、Cd、Pbの濃度を測定した。

3.結果・考察

分析に供した植物の中で、クサレダマが根にCdを最大で110±19 mg/kgDW(5月)、ヘビノネゴザが根にCu及びPbを最大でそれぞれ、2066±511 mg/kgDW(7月)及び2223±105 mg/kgDW(9月)の濃度で蓄積していた。生物濃縮係数で評価すると、クサレダマはCdを土壌の7.2倍の濃度(5月)で根に蓄積させていた。ヘビノネゴザはCu及びPbを土壌の各濃度の1.2倍(7月)、16.9倍(9月)根に蓄積させており、Pbに関しては、土壌中濃度が極端に高くなくとも高濃度に蓄積可能であることが明らかになった。この2種は共に、各重金属を主に根へ蓄積させるため、植物体を除去することで重金属を系外へ排出するファイトエキストラクションには適していないが、重金属の拡散を防ぐ目的であるファイトスタビライゼ-ションには適用可能と考えられた。


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